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2024.10.09
未来社会学科
研究・社会貢献
出前授業

出前授業「表現とコミュニケーション-絵本のちから -」<滋賀県立石部高等学校>

(0)はじめに

9月20日、滋賀県立石部高等学校様から出前授業の機会をいただきました。
未来社会学科准教授の佐々木徹雄が担当しました。
6名の生徒さんたちが授業に参加してくれました。
「表現とコミュニケーション-絵本のちから-」をテーマとし、福祉の分野でひろく扱われる「絵本」というツール、その読み聞かせの場において生じる読み手と聞き手とのコミュニケーションについて考えました。
生徒さんには実際に絵本を読んでもらいながら、絵本について考える楽しい時間を共有しました。

出前授業「表現とコミュニケーション-絵本のちから -」滋賀県立石部高校にて

様々な側面をもつ「絵本」というメディアですが、本授業では、そのなかでも「楽しさを共有できること」に焦点をあてました。
絵本の読み聞かせは、その場にいる相手とならでは、の楽しみ方ができるものです。
今回の授業では、子どもに向けて「うまく読んであげなくちゃ」だけではなく、読み手の大人自身も楽しもう、ということを目標にしました。

(1)文字を音にする

『ぽぱーぺ ぽぴぱっぷ』(文:谷川俊太郎、絵:おかざき けんじろう)

出前授業「表現とコミュニケーション-絵本のちから -」滋賀県立石部高校にて

そのために、まず「文字を音にする」ということに目を向けてみました。
読んでもらった絵本は『ぽぱーぺ ぽぴぱっぷ』。
不思議な音の響きの面白さに、自然に笑顔があらわれてきます。

その後、生徒さんたちがそれぞれ選んで持ってきてくれた絵本を読んでもらいました。

(2)ページをめくってワクワクする

『そらまめくんのベッド』(作・絵:なかや みわ)

出前授業「表現とコミュニケーション-絵本のちから -」滋賀県立石部高校にて

「薦められて今回初めて読んでみた」という絵本だったそうです。
ページをめくるごとの展開をワクワクできるように読んでくれました。
「ページをめくる」ということは、読み手の表現の楽しみの一つですね。

(3)絵の変化を楽しむ

『ねずみくんのチョッキ』(作:なかえ よしを、絵:上野紀子)

出前授業「表現とコミュニケーション-絵本のちから -」滋賀県立石部高校にて

続いては『ねずみくんのチョッキ』
ページの中に描かれているそれぞれの動物の大きさの変化に注目しながら、絵本を楽しみました。
最初はねずみくん、ページのなかに余白がいっぱいあります。
ついつい、身を乗り出して、絵を見てしまいます。
最後の方の動物は、対照的にページいっぱいに描かれています。
ページをめくっていき、絵を見せていくとその絵の変化が楽しめることに気づきました。

(4)状況に合わせた楽しみ方

『パンどろぼうとほっかほっカー』(作:柴田ケイコ)

出前授業「表現とコミュニケーション-絵本のちから -」滋賀県立石部高校にて

まだ一人で文字を読むことができない子どもにとっては、「文字を音にすること」の意味がより大きいのではないか、という前半部での話を受けて、休憩中に迷っている生徒さんの姿がありました。
表紙の折り返しに書かれた、シリーズになっている絵本の登場キャラクターに関する説明部について、「ここは読んだ方が良いのかな。」

出前授業「表現とコミュニケーション-絵本のちから -」滋賀県立石部高校にて

休憩が終わり、読み始めるにあたって、聞いている生徒さんのなかに、本シリーズのキャラクターを知らなかった人がいることがわかりました。
すると、読むべきかどうか迷っていた部分を、最初に読み始めてくれました。
「その場にいる人たちが楽しめる」ということを大切にした姿だと感じました。

(5)視線の動きを共有する

『しろくまちゃんのほっとけーき』(作:わかやま けん)

出前授業「表現とコミュニケーション-絵本のちから -」滋賀県立石部高校にて

また、『パンどろぼうとほっかほっカー』を読む中で、見開きのなかに、複数の絵が描かれているページがあり、そのようなページについて、読み方の工夫を一緒に考えてみました。
この課題に通じる構造を含んでいる絵本『しろくまちゃんのほっとけーき』のなかの、ホットケーキが焼き上がる部分の見開きを例に考えてみました。
「指さしながら読んでみたら、聞いている側がどこを読んでいるかわかりやすいかも。」という意見が出ました。
聞き手がどこに注目するのかを考え、一緒に同じ部分を見たいというときの工夫ですね。

(6)相手の視線を想像する

『わたしのわごむはわたさない』(作:ヨシタケシンスケ)

出前授業「表現とコミュニケーション-絵本のちから -」滋賀県立石部高校にて

続いて『わたしのわごむはわたさない』。
これまでの絵本よりも、サイズが小さいので、「どうしたら皆が見やすいか」を考えて、座る位置を変えることになりました。
少し距離を縮めてみて、より近くで見やすい位置になりました。
時には、指さしも交えながら、絵本のおもしろさを共有しやすい読み聞かせになりました。

(7)一緒に参加するやりとり

『たべるのだあれ?』(作:すぎはら けいたろう)

出前授業「表現とコミュニケーション-絵本のちから -」滋賀県立石部高校にて

次は、飛び出すしかけ絵本。ページをめくるごとにあるしかけに、一緒にワクワクしながら「次はなんだろう?」というような声かけも、ワクワク感を盛り上げていく関わりでした。
現代ではメディアが多様化し、それぞれに強みとなるようなコミュニケーションの方法があります。絵本の強みは、こうしてその場で応答することも含みながら、子どもと大人とが「一緒に」楽しめることだと、あらためて感じることができました。

(8)世代を越えて共有できる

『ぐりとぐら』(作:なかがわ りえこ、絵:おおむら ゆりこ)

出前授業「表現とコミュニケーション-絵本のちから -」滋賀県立石部高校にて

最後は『ぐりとぐら』。
物語を一緒に楽しんだ後に、「いつからある絵本だろう?」という話題になりました。
絵本の奥付を見てみると、1963年。改めて見てみると「えー!」という反応。
世代を越えて語り継いでいく絵本がある。
これも児童文化“財”という言葉に表れるように、
絵本というメディアのもつ強みの一つということが感じられました。

(9)まとめ

今回は福祉の分野でひろく扱われる「絵本」を取り上げながら、読み手と聞き手とのコミュニケーションを考える時間となりました。
生徒さんたちが選んでもってきてくれた絵本は、それぞれに、その絵本のもつ面白さがありました。そのため、多面的な視点から、絵本の表現の面白さを共有するということについて考えることができました。
今回の機会をいただいた先生方、そして参加してくれた生徒の皆様、ありがとうございました。