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2022.03.11
地域連携
社会貢献

2021年度 公開講座 ベルトレスリング~民族格闘技の世界~(上)

健康スポーツコミュニケーション学科
講師 黒崎 辰馬(くろさき たつま)

ベルトレスリングという競技をご存じでしょうか。ロシアや中央アジアを中心に盛んに行われている、帯(ベルト)を使用した組技系民族格闘技を競技化したもので、近年では国際大会や世界選手権などが開催されるなど、世界的に普及が進められている競技です。今回から2回にわたり、ベルトレスリングについてお話ししたいと思います。

――ベルトレスリングとは?

 はじめに、競技について簡単に説明をしたいと思います。ベルトレスリングは、互いに胸を合わせた状態で腰に巻いた帯を持ち、審判の合図によって相手を投げ合い背中から落とすという競技になります(写真1参照)。このような説明をすると相撲をイメージされる方もいるのではないでしょうか。まさにその通りで、ベルトレスリングは一種の相撲とも考えられます。相撲のような力くらべや取っ組み合いといった営みは様々な文明や時代、民族で行われてきたとされていますが、帯を使用した相撲の歴史も同様と考えられています。こうした古くから伝わる帯を使用した相撲を、現代においても伝統的に行っている地域や民族が多く存在するため、それらに統一したルールを設け、競技化したものがベルトレスリングとなります。

写真1 競技開始時の姿勢

――ベルトレスリングのルールは?

 ベルトレスリングは前述の通り、様々な地域や民族で取り組まれているため、それぞれのスタイルやルールがありますが、今回はベルトレスリングを統括する世界レスリング連合(UWW)が示しているルールに基づき説明をします。
 ベルトレスリングは、レスリング競技と同様に、直径9mの円が描かれたマットの上で行います。選手は、決められた色(赤色もしくは青色)のジャケットと白いパンツを着用し、長さ約180cm、幅およそ7cmの黄色のベルトを腰に巻きます。シューズは着用する場合も着用しない場合もあります。ベルトは胸の位置で結び目をつくりますが、その際こぶし二つ分の余裕を持たせて結びます(写真2参照)。

写真2 ベルトの結び方

 試合は、互いに胸を合わせ、ベルトを掴んだ状態から始まります。ベルトを掴む際は、右腕を相手の左脇の下に通し、左腕は相手の右肩越しに背中辺りでベルトを掴みますが、その際ベルトは、手首を一周させるようにして掴みます(写真1参照)。その後、両選手の準備が整ったことを確認し、審判の合図で試合が始まります。
 試合は3分で行われ、5点技が成立した場合、規定の点数差(6点)がついた場合、負傷などにより棄権が成立した場合、試合時間が終了した場合に終了します。

 各点数の成立は以下の規準によって決まります。
【5点】
・組み合っている状態から一気に相手の背中または両肩をマットにつけるような投げ技を行った場合。
【2点】
・5点が認められるような技術展開を行った場合でも、先に自分の身体がマットについている場合。
・投げ技を仕掛け、相手の身体がマットに対して90度以上傾いた場合。
【1点】
・投げ技を仕掛けたが、相手の身体の傾きがマットに対して90度未満の場合。
【ストップ】
・攻守にかかわらず、いずれかの選手がマットに膝をついた場合。
【警告】
・ベルトを持っている手がベルトから離れてしまうと試合が中断され、手を離した選手に対して警告が与えられる。
・頭を極端に下げたり、ベルトを持っている手で相手の身体を押したりするなどして技術回避を行った場合。
・場外に出てしまった場合。
・同じ警告を繰り返すと、警告と同時に相手に1点が与えられる。
・同じ警告を3回行うと、失格となる。
【反則】
・ベルトレスリングには、フリースタイルとクラシックスタイルがあり、フリースタイルは足を使った攻撃が許されているが、クラシックスタイルは足を使った攻撃が許されていないため、足を使った攻撃を仕掛けた場合反則となる。点数が認められる場合であっても足を使った攻撃であれば反則となり、点数は無効となる。

 以上がベルトレスリングの点数規定となります。このように細かく点数が定められてはいるのですが、実際は5点技で勝敗が決まることが多く、とてもダイナミックな試合展開が多いです。また、ジャケットは赤色と青色が基本ですが、スタイルによって青色と緑色のときもあり、ベルトも赤色だったりする場合があります。スタイルやルール、大会などの違いによってジャケットの色や帯の色、シューズ着用の有無やベルトの持ち方といった部分に違いがあるという点にも、スポーツ化が現在進行形で行われているということを感じることができます。

――ベルトレスリングの魅力とは?

 それぞれのスポーツにいろいろな魅力がありますが、ベルトレスリングの魅力はやはり勝敗の決定がシンプルで分かりやすいということだと思います。先にも述べたようにベルトレスリングの起源は、人間が古来より行ってきた力くらべや取っ組み合いといった営みであり、特別な道具を必要としないため、勝敗の決着がシンプルかつ分かりやすいものとなっています。「投げた方が勝ち」そうしたシンプルさや分かりやすさが競技者の大胆な技術展開につながり、観る者を熱中させる。そういった魅力がベルトレスリングにはあると私は思います。

次回は、3月18日(金)に更新をします。